Web活用備忘録

『Web制作会社』の終わり

2008 年 7 月 27 日

アイタス石川
こんにちは。今スグ試せるWeb活用研究会の石川です。

以前のエントリ『生かされている。』でご報告した件、

とあるアイタスファンより、本をプレゼントしていただきました。

ようやく読めました。おもしろかった! プレゼントしていただいたかた、ありがとうございます。

内容的なものはアマゾンのレビューでどうぞ。

なんらかのかたちでWebサイト制作にたずさわるすべての人に一読をおすすめしたい本です。発注側である企業Web担当者・経営層にも読んで欲しい。

『明日の広告』は個人的には後半がおもしろかった
写真のとおり、本の導入部分、前半部分は私はあまり入り込めませんでした。

私は自分がやっている仕事を「広告」だとは捉えていないのと、仕事でつくるなにがしかを届ける相手を「消費者」と定義していないあたりで、この本の著者の立脚点というか出自というかフィールドというかが私のそれと異なっているのに囚われてしまい、読み始めた時には書いている内容がすとんと自分の中に入ってこなかったのです。

そのへん気にならなくなっていった後半から、俄然おもしろくなりました。

『力のあるWebサイト制作会社ほどサイト制作の話をしなくなりつつある』

Webサイト制作会社はサイトを作るのが仕事ですから、もちろん制作実務のあれやこれやも打ち合わせします。が、投資意義のあるビジネスに役立つサイトを作ろうとすると、サイト以前の話を随分しないとダメだなという感が強くなっています。

『明日の広告』を読んで、↑このへん、あたらめて「だよなぁ」と思いました。

【ご注意】
これ以降は『明日の広告』を読んでいないとわけがわからない話となります。

たとえばECサイトの話。どんなに優れたECサイトを構築しても、それだけでは売れない。楽天三木谷社長は著書『ネットショップの教科書』にて「サイトは2割」と述べていたと思います。たぶん。


しかるに、売れているショップはサイトをきちんと構築・運用した上で、それ以外のことを徹底的にやっています。

D社が実施していることはWeb2.0・CGM・クリエイティブコモンズといったものとは本質的に対極にあり、言ってしまえば古典的。聞けば「なんだそんなことか」といったものばかりだ。しかし、そういったあたりまえのことを徹底できるところこそ生き残る会社だと強く思う。

当社はWebサイト制作会社なので、顧客から「ECサイトつくって」とオーダーがあればつくります。そこはお任せあれと思う。

でも、「ちゃんとしたECサイト」だけあっても、売れません。「その他8割」がどうなっているかが問題。

上記の真実について、アイタスではきちんと依頼主に説明しており、その上で「売れて売れて困っちゃうよワハハ」プロセスに不可欠な構成要素のひとつである「サイト」を責任もって制作しています。

乗りかかった舟というか、余計なお世話というか、無料のサービスとして「ご承知かと思いますが、サイトの前後にこういった要素が必要です。これらを十全に行うための業務フロー・オペレーションの確立が不可欠です」といった話をします。

これはアイタスがお代を頂戴して行う仕事ではないので、私が勝手に説明する部分です。

クライアントに喜ばれる時もあれば「ホームページ屋風情がなにをえらそうに」と不興を買う時もあります。

ただ、「ちゃんとしたWebサイトをつくる」という仕事を全うしようとすると、避けて通れない話ではあります。

アイタスは

○言われたことをやる制作会社ではない(下請け仕事はそれでいいと思う。元請けが欲しいのは作業の成果物なのだから)

○クライアントを騙して「こういう表現・手法、おもしろいですよね。今回もFlashどーんでひとつ」といった企画を推す会社ではない

○依頼主の真の目的をともに探し、そのためには何が有効なのかを考えるWebサイト制作会社

なので「アイタスが請けるサイト部分も重要だけど、それを活かす上でも他の部分は」といった話が必ずついて回るわけです。

賢明な読者はお気づきのことかと思いますが、ここにWeb制作会社の自己否定・自己矛盾が発生しています。

○クライアントの目的を達成するためには、Webサイトが必須ではないケースがあるかもしれない。

○Webサイトは必要であっても、それは一部。

○Webサイトを活かすにしても、その他の部分は誰がどうするのか?

「ちゃんとしたWebサイト」をと指向すればするほど、アイタスは自分の仕事(≒目的ありきでちゃんと考えて企業Webサイトをつくる)から遠ざかってきているのがわかります。「サイト以外の8割」にコミットしていかない限り「ちゃんとしたWebサイト」は機能不全になります。

おそらく、インターネット黎明期から「企業のホームページを制作する」といったビジネスに着手し、それを今でも続けているWeb制作会社では、同じような観点にたどり着いてしまっているのではないでしょうか。

「残り8割」についても責任もって請けるとしたら、それはもうWebサイト制作会社ではありません。

このへんに到達してしまっているWebサイト制作会社は、今後、どのような針路を取るのか。

結局のところ、それは『明日の広告』で提示されているチームにおいて、自社あるいは自分をどこに位置づけるかと同義になります。

私がフリーランスでWebサイト制作を始めた時分、この命題についてはまだわりと牧歌的に考えていました。’95年〜’96年あたり?

これ以前に、ニフティの在宅ワーキングフォーラム(FWORK)等では、こういったネットワークを活用する物理的制約に囚われないタスクチーム・プロジェクトチームの可能性について議論されていたように記憶しているのですが、そこで到達できなかった問題、また、同様に、私も主力メンバーとなって実施した『モチアジドットコム』というひとつの実験においても解決できなかった問題があります。

この問題を解決すべく、合資会社モチアジドットコムと同時期に法人化した私の事業拠点・合資会社アイタスにおいて、私はこの会社自体を『明日の広告』で述べられている「消費者本位のチーム」として機能するよう採用その他を進めました。

○アイタスは「石川義洋事務所」ではない(私の属人的パフォーマンスを高めたり、私の仕事をサポートするための個人事務所ではない)

○Webサイト制作の工場にはならない(したがって、同じようなスキルを持つ者ではなく、キャラがかぶらない者から採用する。アイタスのあるべき姿はデザイナー20人ではなく、デザイナー5・イラストレーター2・フォトグラファー1・コピーライター2・エンジニア5・アナリスト2・楽団3といった方向)

こういう指向性だから『仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本』に惹かれるわけですね。


そして、現時点。「オーダー受けて企業Webサイトをきちんとつくるのなら、Webサイト制作会社のままではいられない」という現時点。2008年。

当社含め、Web制作会社にはいくつかの選択肢があるように思います。

「結局のところ、それは『明日の広告』で提示されているチームにおいて、自社あるいは自分をどこに位置づけるか」という問いに対して導き出せるいくつかの選択肢ということですね。

『消費者本位のチーム』において、自分(自社)はどのポジションなのか。

ここの位置づけ、選択によって、アイタスでも前面に出す商材が変わります。

当社がやりたいのは「本気の企業に対して本気で呼応する」ことなので、それを最もスムーズに行うためにはどうするか。ここを考えています。

以上、プレゼントしていただいた『明日の広告』についての感想文でした(どこが)。

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